JAK阻害薬と呼ばれる新しい抗リウマチ薬のグループがあります。
リウマチ医の間では、略して「JAK=ジャック」などと呼んでいます。
JAK=Janus Kinase ヤヌスキナーゼ は免疫に関与している成分の一つで、
これを抑えることが関節リウマチの改善につながります。
https://www.rheuma-net.or.jp/rheuma/rm400/rm400_chiryo_jak.html
に判り易く説明されていますので是非、読んでください。
さて、リウマチ治療の第1段階はメトトレキサート(MTX)ですが、このMTXの効果が不十分な場合、

次に使うべき薬が生物学的製剤(バイオ)とJAK阻害薬になります。
では、どちらが良いのか?

生物学的製剤(バイオ)JAK阻害薬
効き目若干JAK阻害薬が良い
妊娠希望、妊婦、授乳中使用可のものがある禁忌(絶対ダメ)
腎機能障害、肝機能障害がある使用可の場合があるまず無理
高齢者要注意要注意(というか、やめておいた方がいい)
投与経路注射のみ(月1回のものから、週1回まで。毎日ということはない)飲み薬(ただし、毎日服用)
副作用感染症に注意
悪性腫瘍発生率は増えない(リンパ腫を除く)
感染症に注意(特に帯状疱疹、肺炎)
心筋梗塞、静脈血栓塞栓症がTNF製剤より多い
悪性腫瘍発生がTNF製剤より多い
費用(3割負担、1か月の薬剤費)エタネルセプト50mg、アクテムラで2万円前後
バイオシミラー(ジェネリック)もある
ゼルヤンツ 約4.5万円
歴史レミケード2003年ゼルヤンツ2017年

個人的にはバイオ優先です。その理由は約20年間の使用歴から効果と副作用がよく解っているからです。我々の免疫システム
は非常に複雑です。関節リウマチにも複雑な免疫が関係しています。その中で、エタネルセプトはTNFα、アクテムラはIL-6と言うように、バイオはリウマチに関係する免疫異常を(比較的)点で抑えこむお薬です。一方、JAK阻害薬は広範囲に抑え込みます。1剤でTNFαもIL-6も、その他の免疫システムも抑え込んでしまいます。それが高い有効性につながっていると思われますが、逆にそれが副作用にも関係しています。最近になり心血管合併症と発がん性がTNF製剤に比べて多いとの警告が発せられました。特に65歳以上の高齢者は要注意です(むしろ禁忌に近い)。また、JAK阻害薬は高いです。リウマチ治療は長期間に渡って続けなくてはなりません。
バイオには数種類あります。何種類か試して、バイオでは効かない場合にJAK阻害薬を検討することにしています。飲み薬だからと安易に飛びつくのは早計です。
2024/4/4 追記 本年3月の東京都医師会雑誌内に慶応義塾大学のリウマチ科教授の金子先生のご意見が載っていました。JAK阻害薬への警鐘を鳴らしていらっしゃいます。p17